かつどうにっきとびぼーろく

落書きとかコスプレとかゲームとかする人の適当なブログ

さつきりんのはじまり

電波あふるるテキストを書いてしまったので

--

人形、人形、人形。
幻想郷というこの小ぢんまりとした閉鎖されたせかいは、人形の世界だ。
神の定めた役割(ロール)を演じ、唐突に起きる問題に対して執行者たる巫女/御子が約束されたメダリオンの祝福を受け飛び回る。
観測されなければ静止する世界。私はそれを外から眺める。私は観測者、私は正直者、あの世界から解放された1人目の存在。
古の昔に封印された旧支配者たちでも、別の方角に定められた世界でもない、古い世界と新しい世界の狭間に産み落とされて、その世界の物語(ストーリ)に沿ってあの世界から零れ落ちた、いうなれば「定義された外側」の存在。
私は世界の中に組み込まれつつも世界からはじかれ、世界を傍観し、世界を観測する。外なる者に最も近い内なる存在(モノ)。

そう思っていた、アレを見つけるまでは。
私が触れたのは、幻想郷を形成する外郭に残された残照。神すらも打ち捨てた未使用デエタ。そこにアレは居た、彼女は居た。
名前と、花と、風。後者二つは別の誰かに「使われて」しまって本当にただの残りカス。でも、彼女はそこに居て、私に声をかけた。
「あなたはだあれ?」
私は答えた。
「正直者」
「正直者さん、私を見つけてくれた人、私と一緒に×××」
彼女の見えない形が崩れてゆく、そこに居るのにそこに居ない。定義されていないから、そこに居ることもできないのに、そこに在ることは間違いない。
私は無性に苦しくなった、悲しくなった。私はあくまで、そして外なる者が飽く迄「定義された外側」だった、でも彼女は、彼女は定義すらされていない。ほんとうの外側「最悪世界から徹底的に永遠に除去」領域。
ここで私が手を取らなければ、彼女は永遠にこのままだ。それが正しい、それがこの世界の形。
でも私は世界の外側、タロットの隠者、隠者が何をしようとも、Wheel of fortuneは観測しない。
私は何をしようとしているのだろう、自分でもわからなくなる。でも私は正直者、自分の気持ちに最も正直に動く者。だから私は、喪われた吊るされた少女に手を伸ばす。
彼女の見えない手と、私の手が、バイナリ領域で絡み合う。触れ合ってはいけない二つの領域が触れ合って、世界にバグが広がってゆく。
交わってはならない大アルカナが交わりあい、21の世界は歪んで行く。
私たちはどうなるだろう、私に名前はない。あるのは正直者という定義だけ。彼女に定義はない、あるのは「×××」という名前だけ。
「あぁ、そっか、そうなるか。」『そうだね、そうなるのね。』
私と彼女が混ざり合う、世界の外と外が交わりあって、マイナスとマイナスをかけるとプラスになるように、ずいずいと殻の奥に、空の内側に引き込まれてゆく。
からの内側に引き込まれて、上りながら沈んで行く太陽が見える、黄金の夜明け、私たちの始まり。

ふわりと、世界のねじれが収まって、私は神社の石畳に座っていた。手には六角二胡を握りしめ、姿は曖昧なモノクローム
神社には誰もいなかった。むしろそれは好都合、メダリオンを持つ巫女/御子たちには私は間違いなく排除対象。
「沙月燐、わたしは、沙月燐」
サエツキリン、サツキリン、読みすら曖昧な自らの名前を確認するかのように口に出す。
さわさわ、もぞもぞ、新たな自らの姿を確認するかのように、少し、体をまさぐった。
私は此処に、明確な存在を得た。自らを縛る肉体を手に入れ、自らを定義する名前を手に入れた。
一度飛び出した世界に/私を否定した世界に、私は明確に着地した。
さて、何処に行こうか。

私は沙月燐、内の外から来たあなたたちの隣人。
私は貴女たちを××××。