かつどうにっきとびぼーろく

落書きとかコスプレとかゲームとかする人の適当なブログ

こいしちゃんテキスト

今日も今日とてテキストを書く練習

---

ベルが鳴る、りりりりりぃんと鳴っている。その音が耳から私の体につたわって、心のなかで溶けてゆく。
「ふわぁ…あぁ…」
 私の体が起き上がる、ほんとじゃない私から、ほんとの私に戻ってゆく。
ちゃんとした"私"で目を覚ますのはいつ以来だろう、私が私であるためには、私がこの私のベッドで寝て、このベルの音で起きないと私でいられない。
いつもの服に着替えて、帽子のリボンは反対側に、私が私である時の、唯一外からわかる判別法。おねえちゃんは気づいてくれるかな?
服を着替えたら鏡の前へ、帽子の角度は30°
無意識の私が起きてくる前におねえちゃんのところへ行かないと、私のおねえちゃんは私のもの、私になんてあげないんだから。

◆◆◆

 古明地さとりは自室にて、孤独に浸っていた。
彼女の妹たる古明地こいしが瞳を閉じて以来、彼女が感じ取れる「同族」の気配というものは皆無であり、故に彼女は孤独であった。
しかし時折、その孤独の暗闇に小さな灯りが灯ることがある。大概、それは彼女の心が見せた幻影であるのだが、今日の日は違った。間違いなく、一つの明かりが灯っていた。
まさか、とさとりは体を起こす。その時、大きな音とともに扉が開け放たれた。
「お姉ちゃん!おはよう!」
その"瞳"は開いてはいない、彼女は何処も変わらない。しかし、帽子のリボンは反対側。
「おはよう、こいし」
彼女にはわかる、自らの妹の判別法。今この時の妹は、間違いなく私の妹であると。
「だいぶ、久しぶりね?」
「そうだね、毎日会ってるのに、私たちは会ってないから。」
こいしは無意識に囚われた。バアル・ゼブルがバアル・ゼブブにに貶されたように、こいしの意識はこいしの無意識に堕とされた。
彼女たちは話す、一つ一つの、なんでもないことを。舌の上で宝石を転がすかのように、空間を言葉で満たすかのように。
たった二人の甘美な空間、会話という名の睦み合い、まぐわい続ける言葉の流れ、2つは1つ、2人は1つ。
でも、それはずっとは続かない。夢には終わりがあるものだから。こいしにとってのゆめはうつつ、うつつはゆめの逆転世界。
「ふ、あ」
漏れる声、現の終わりを示す声、こいしを夢へとつれてゆく、夢魔の伸ばした魔性の手。
「あれ?おねえちゃん?おはよう!」
「えぇ、おはよう。」
夢は崩れ、現が降りる。世界が冷えて、さとりの心は凍りつく。
こいしは、虚ろな瞳で部屋を出た。さとりは一人、置き去りとなった。
孤独の波が押し寄せる。さとりは、震える体を抱えながら、ベッドの中に潜り込んだ。